老健における作業療法の考え方

老健の訓練室における訓練とは在宅生活はイメージしづらく、利用者の生活の課題もみえてこないものなのです。まずは、老健という模擬的空間であっても起床から就寝までも作業療法として介入すべき動作ととらえて、常に在宅での生活と比較しながら目標を設定していく必要があります。そのためには、更衣や排せつ、食事や入浴などのADL場面に作業療法士に関わり、利用者それぞれの課題を他職種と共有することが大事です。

何を、どこまで、どうやって実行してもらうかを介護チーム内で統一することが求められます。

また、作業療法士は作業活動やグループワークも大切ですが、日常生活での応用動作と実際の生活に戻って社会とのつながりを持ち続けるために必要な能力を身につけていくことを指導し、支援する立場にあるのです。そのため、ビニールエプロンを着せた状態での食事や車いすのフィットプレートに足が乗せられバックレストにもたれかかったままでの食事、オムツでの排せつや一方的に洗われる入浴、座位が可能であっても機械入浴をさせるなどに疑問を持つことが大事です。また、入れ歯が入っていないままで放置しておくことも同じであり、施設内で起きているおかしな現象をおかしいと気づく目を忘れてはけないのです。
また、生活史を聴収し、利用者を知る過程はよく行われていますが、現在の利用者と生活史の関連など情報分析が十分に行われていないことが多いため、家族の面会頻度や家族との関係性など周辺情報を的確に収集していくことが必要です。その情報を整理し、全体をとらえながら在宅での生活のイメージをしていくことは現場での利用とを日々接している作業療法士の役割です。